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お金はどこに隠れているの?

平成201228

  世界に流れている現金の総額は約1京円(イチケイエン=1,000兆円の10倍)くらいだといわれているが、勿論私は、その札束の総体積など想像することはできない。

  京という数の単位は1016乗で12桁の私の計算機には納まり切れないが、一日に1億円を使えきるとして、1億日間かかる勘定になる。さらに、1億日を365日で割ると273,972年かかる勘定になるので、ともかくめでたい。

日本人の貯蓄総額は約1,400兆円で、日本のGDP(国内総生産=一定期間に国内で生産された財貨・サービスの価値額の合計)は約513兆円、アメリカのGDP1,200兆円となっている。このような単位を軽々しく口に出す私だが、ここ何十年にわたり己の家庭内での経済的変化の無いのには、つくづくあやまる。家族は当然のように、私に白い目を向けることが多い。

  世界中には富豪と呼ばれる連中がゴマンといるが、これらは全人類65億人の0,0001%にも満たない。大部分の人たちは自分の一家を養うことで精一杯の収入で生きている。誰もいなければ、大声で泣きたいくらいだ。

  アメリカに例をとっても、自分で裕福な国民との自覚症状のある人は国民の10%で、その平均年収は93,000ドル(約11,160,000円)である。一方、貧しいとの自覚症状を感ずる余裕もない平均年収が5800ドル(約696,000円)の貧困階層の人がアメリカ全国民の10%にあたる。

  3代アメリカ大統領のトーマス・ジェファーソンが1775年に起草した独立宣言書の中で、「我々は次の事実をいつでも信じている。総ての人間は平等であり、生存、自由、そして幸福の追求など侵すべからざる権利を、神により与えられていることを。」と、いわれて久しいが、少なくとも現在までは、人間が平等であったためしはなく、また自由などが護られたという事例は数少ない。このジェファーソンは、当時の奴隷制度を反対する立場にたっていたが、彼自身は187人の奴隷を所有していた。アメリカ人には、このように表裏のはっきりした男が多かった。また、女性のほうはもっと多かった。

ある日ジェファーソンは、「黒人と白人とが、一つの国で平等に暮すことはできない。」との言葉を吐いた。妻と死別した彼は、その後に女奴隷を終生の愛人とし数人の子をもうけたが、自分の子としては一人も認知することはなかった。歴代の大統領を含め、アメリカ人には昔から二枚舌の人が多かったが、この時の彼は自分の発言を守り通した。奴隷や黒人や中国人や日本人は、白人とは平等ではなかったのである。そして、貧乏な白人と金持ちの白人もまた、平等ではありえなかった。

  都合により突然として話は変わるが、米国の月刊経済誌[フォーブス]は日本語版を含めて7つの言語で発売されている。毎年のフォーブス3月号には、前年の個人資産を集計した世界長者番付が発表される。その記事には多くの人が興味を持っているとみえて、出版社は3月号だけは事前に3割ほどの増刷で対応している。

  2007年の番付による個人資産10億ドル(@120円―約12,00億円)以上の富豪は946人で、マイクロソフト(ソフトウエア最大手)社長のビル・ゲイツ会長が560億ドル(67,200億円)で首位だった。

日本にも飛びぬけた金持ちがいる。

75位に孫正義(ソフトバンク社長)の2007年現在資産は58億ドル(約6,960億円)

85位に佐治信忠(サントリー社長)の2007年現在資産は47億ドル(約5,640億円)

最も羨ましいのが、アラビアンナイトの国々の富豪たちである。

その筆頭に上げられのが、13位に位置するアル・ワリード王子(サウジアラビアの投資会社キングダム・ホールディング・カンパニーの95%株主)の203億ドル(約24,360億円)である。

前田高行著[アラブの大富豪]によると、中東には地球内に存在する化石燃料の約半分にあたる1兆2,000億バレルの化石燃料が眠っているという。1バレルは119.24リットルで、一升瓶約66本分100ドル(12,000円)が現在の相場である。

  アラブ諸国の中でもアラビア半島のほぼ全域にまたがるサウジアラビアの地下には、世界全体の埋蔵石油の4分の1(約2,500億バレル)が眠っている。これは、とっても多い量である。アラビア石油㈱の現地駐在員として6年間サウジアラビアのペルシャ湾岸カフジ勤務の前歴を持つ前田高行氏の本の中でのスケールの大きい語りには胸をはずまされる。

  サウジアラビアという国名はサウド家のアラビアの意味で、当然のことに石油の利権を握っているのがサウド王家ということになる。この国には、民主主義や男女同権、国民投票選挙などいう言葉はない。時として個人規模の労働争議のようなものはあるが、即刻、申立人の首は遠くまで飛ぶ。つい最近まであった話しで、シャムシールと呼ばれる中近東の切先が湾曲している細身の刀で首を打ち落とされるのである。切れ味は抜群で、ボーリングのボールのごとく前方に転がるらしい。ほんとに。

  日本の6倍の国土を持つサウジアラビアの99%は砂漠である。首都リヤドは人口400万人の都市だが、100年前には童謡[月の砂漠]の世界のオアシスの村であった。

  18世紀ごろに、リヤドの近くのオアシスに住んでいた[デルイーヤ]という遊牧民のベドウィン一族がいた。当時の遊牧民は、砂漠のなかの少ない草場を求めて羊やラクダを放牧するのを生業としていたが、砂漠を旅する隊商やオアシスに住む他部族を襲撃して略奪することにも大きな精力を傾けていた。

  [デルイーヤ]の族長の息子[ムハンマド・ビン・サウド]は武勇にすぐれた男で人望も優れていた。父の許を[ワッハーブ]という男が過激なイスラム教の布教を目的に訪れていた。二人の若者は気が合った。ムハマドの闘争心とワッハーブの宗教心により、まもなくアラビア半島の大部分を制圧し、第一次サウド王朝を樹立した。その後の19世紀に同じベドウィンのラシード家に敗れ、一族の長[アブドルラハマン]12歳の息子とクウェイトの[サバーハ家]に落ち延びた。この息子が[アブドルアジズ]で、後に[砂漠の黒豹]イブン・サウド(サウド家の息子)と呼ばれた現在のサウウジアラビア初代国王である。

サウド家の跡取り[アブドルアジズ]は、少年期をペルシャ湾の奥の港町クウェイトで過ごした。クウェイトは一時期、東南アジアから船で運ばれる品々をラクダに積み替える港として栄えたが、17世紀に喜望峰回りの航路が開かれ、さらに19世紀末のスイズ運河開通等により、しりつぼみに寂れていった。

  アラビア半島とイランの覇権をオスマン・トルコと争っていたイギリスは、イランの石油を求めてペルシャ湾に入り込んできた。1892年に発明されたディーゼル機関の燃料としての石油の必要性が増してきたためである。

  イギリスはアブダビ、ドバイ、カタル、バハレーンなどを下し、クウェイトにも保護領になることを勧めた。オスマン・トルコの厳しい税金にウンザリしていたクウェイト首長の[ムバラク]は、一発回答で条件の総てを呑んだ。

  イギリスの活発な進出状況を眺めていたサウド家の跡取り[アブドルアジズ]は、「サウド家再興には絶好のチャンスだ!」と呟やいた。1902年、22歳のアブドルアジズは40人の部下をつれ700Kmの砂漠を渡り故郷のリヤドに駆け戻った。ラシード家の要塞に侵入しての乱暴狼藉は眼を覆うばかりであったが、とにかく親父が失ったものを自分の手に取り戻した。アラビアの地には[カテバーカーングーン]という言葉があり、この言葉により威勢にのった彼は、アラビア半島中央部の砂漠のオアシスに住む部族を次々に制圧していった。

アブドルアジズは支配下に入った部族連中の反逆を防ぐ意味の二つの政策を実行した。一つは宗教心を呼び戻すことであった。これは、当時乱れていたイスラム教を強化するために、サウド家が頑なに守ってきた戒律の厳しい[原始イスラム]を徹底させることであった。

二つ目は、征服した部族長の娘を妻に迎えて子を成し、血縁関係を強化することであった。イスラム聖典コーランでは、複数の妻を持つことが認められている。その後に統一がなるまでのあいだ、アブドルアジズが制圧した部族長の娘との婚姻作戦は続けられた。あるとき、部下に集計させてみると、26人の王妃との間に36人の王子がいた。その36人の王子の一人が現在のアブダッラー国王である。

  上記の26人の王妃のほかに、名前が記録されない王妃から27人の王女が生れている。最終的に集計するとアブドルアジズは生涯に30人以上の女性を妻としたことになる。彼は鼻歌まじりに自分で立案した方針を自分で実践し、精力をもって勢力の拡大につとめた。

  アブドルアジズの36人の王子たちもまた、複数の妻を求め多くの王子を成した。アラブの女性は一般に早婚だといわれ、それぞれが多産の遺伝子を持っている。その結果、36人の王子から254人のアブドルアジズの孫にあたる王子がうまれた。現在の段階でのサウド王家の王子は1043人で、今この時でも何十人かの王子の妃が受精しているかもしれない。

  サウジアラビア王位継承法では、アブドルアジズ初代国王の直系男子が王位継承権を持つ。現在、王位継承権を持つ王子が1043人+αということになる。彼らには、生れると同時に相当の金額の手当てが支給され続ける。サウジアラビアの王子たちは政府組織の隅々まで浸透し、わずかではあるがビジネス界に進出し世界的富豪に名を連ねている。アル・ワリード王子のように。

  彼ら親族の付き合いの一例をあげると、王子同士がレストランで食事をし、その一方が支払いをする。次にたちよったローレスロイスの並ぶ店頭で最新型の車種をそれぞれが希望した。食事代をださなかった王子がいう。

「今度は私に払わせてくれ」

  ジョークとしてはかなり古いものだが、笑ってばかりもいられない。

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